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最高裁判所第一小法廷 昭和28年(あ)5257号 決定

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人高橋万五郎の上告趣意第一点について。

原判決の維持した第一審判決の確定した本件浅川町自由労働者組合と須賀川公共職業安定所間における失業対策事業の適格審査についての交渉のごときものは、使用者対勤労者というような関係に立つものではないから、憲法二八条の保障する権利の行使に該当しないことは、当裁判所の判例の趣旨とするところである(判例集七巻五号一一一一頁以下、同三巻六号七七二頁以下参照。)。されば、所論は、その前提を欠き刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

同第二点について。

所論は違憲をいうが、その実質は、原審で主張、判断のない第一審判決の単なる訴訟法違反の主張に帰し、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。そして、訴訟費用を被告人等に負担させても憲法三七条二項、三項に反しないことは当裁判所大法廷の判例とするところである(判例集二巻一四号一九三四頁以下、四巻六号九六六頁以下参照。)。

被告人飯島義江の上告趣意について。

所論は違憲をいうが、所論拷問、脅迫の事実を誤むべき証拠がないから、その前提を欠くものであり、また、所論交渉が憲法二八条の保障する権利の行使に該当しないことは弁護人の論旨第一点について説明したとおりであり、その余は、事実誤認、単なる訴訟法違反の主張であって、いずれも、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

被告人江田司の上告趣意は、事実誤認、単なる訴訟法違反の主張を出でないものであり、被告人小山田正雄の上告趣意は違憲をいう点もあるが、所論脅迫、拷問の事実を認むべき証拠がないからその前提を欠くものであり、その余は結局事実誤認、単なる訴訟法違反の主張を出でないものであり、被告人上野主一の上告趣意は、事実誤認、単なる訴訟法違反の主張に帰し、いずれも、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

よって、同四一四条、三八六条一項三号に従い、裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 斎藤悠輔 裁判官 真野 毅 裁判官 岩松三郎 裁判官 入江俊郎)

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